2024/02/22

第46回学生設計優秀作品展 作品紹介[3]

都市の履歴を晒し続ける
ー過去と未来を継ぐ新たな都市のカタチー


東海大学工学部 建築学科 池谷琳花

[作品データ]
建物用途:公共施設
敷地所在地:赤坂

[制作データ]
作品総点数:模型1点、図面6枚
制作期間:構想- 6か月、制作- 4週間
主な模型材料:スチレンボード、ヒノキ角材、ボール紙

[設計主旨]
赤坂は江戸時代より政治の中心地より栄え続け、現在も再開発によって更新を続けている。しかしそのような更新はかつての背景を取り払い、街の記憶の断絶となりうる。そこで「昔がはだけて見える」と「更新を続けている」の2つの街の特徴を踏まえ、今現在の街区の空地に構造躯体による空間を配置し、そこに劇場やギャラリーや商業空間を設ける。構造躯体が抱く透過性が街区の建築群の中で橋渡し的に隣接する建築と人の動線や視線の抜けなどによって現在新たな繋がりを生む。街区全体が飛躍的に更新するのではなく、過去から現在、そして未来へと緩やかに変化していく新しい都市の更新方法を提案する。

[推薦のことば]
東海大学 助教 野口直人
研究室における卒業設計は、個人的な興味を構造的に分析することから始める。個人が根底に抱く価値観をデザインの思想として確立することが、建築と社会の常識を揺るがす強い武器になると考えている。池谷さんは和服にみられる“はだけ”や“まくれ”、“重なり”といった中途の状況に興味を持っていた。それは0から面的に刷新する現代の都市開発への問題意識となり、街の履歴が重なりながら、中途の魅力を内包するような提案へと繋がっていった。 過去から現代に続く大小様々な建築ボリュームの、まるで抜け殻や残像のような空間群は、従来の価値観から逸脱し た低密度な床面積である。ゆえに隙が生まれ、接着剤のように既存の都市と共存しながらも折り重なって特異なスケールの場を生み続けてゆく。形態とともに人々の振る舞いも過去から未来へと折り重なる状況は、時間軸を取り込んだ都市の新たな更新指標といえるであろう。


第46回学生設計優秀作品展 作品集から
当サイトの情報を転載、複製、改変等は禁止いたします。